加山又造の小宇宙 物販コーナーにて 思うこと

本日は銀座松坂屋別館五階カトレアでの作品展示と、本館一階イベントブースでの催事二日目でした。

私はお昼から会場入り。

イベントブースの前は中国・台湾からのツーリストバスのお客様たちの解散・集合場所になっていて、人通りは相当に多いのです。しかし、モノはなかなか売れません。そういうわけで、「売る」ことを主眼にどのようなことができるかを考えました。

現地案内員の説明を聞き終えて店を見回したち多くの方が仰るのが「上海と同じじゃない」「王府井のほうが物が多いぞ」「デパートはいいから他へ行きたい」・・・・等等。

確かに、今、松坂屋さんは改装中でいつも以上に売り場面積が狭いし、品揃えも縮小しています。

そして、我々の催事は眼に入らない様子。

何故か?
答えは簡単でした。私たちのブースは中国の人にとってあまりにも、色味が地味すぎる。

今日は我々の売り場と通りを面して隣にある女性向け服飾雑貨のコーナーに昨日と違う中国人の女性が入っていました。彼女がレイアウトしたのでしょう。上半身のマネキンに青いストールが巻いてあり、それと揃いの赤のストールと黄色のストールがおのお客様の手に一番近いところに陳列されていました。

すると皆さん、まずこれをご覧になる。あまり関係なさそうな男性まで、まず触ってみている。どうも、無意識的に「色」が関係しているようです。中国の看板は「赤・金・青」ですものね。

これに対して、日本人が海外で特別に惹かれる色があるかというと、そういう傾向はない気がします。でも、視覚的質感で「ふわふわなもの」が好きだな、とは思います。この教訓は明日以降に生かそうと思います。

今年、中国ではショッキングピンクに近いピンクが流行中のようで、母がその色のシャツを買い、急遽絵付けをはじめました(会場で。)


大声での呼び込みがないことも要因ですこんな表の売り場をとったので、せっかくだから呼び込みをしましょうか。喉の風邪がもう少し良かったら、明日呼び込みをしてみます。言葉は通じなくても、大声で呼び込みをされるとそこで何をしているのか興味を持ってくださいます。中国のお土産やさんみたいに「明信片!明信片!」と叫んでみることにしました。

それから、「用途がわからない」ことも購入に繋がらない主たる原因だということも分かりました。

私は今日寒いので売り物と同じ風呂敷をネッカチーフにして巻いていたのですが(笑)それをご覧になったお客様が同じものを欲しいと仰ってお買い求めになりました。どんな用途でも、「何に使えるか」が分かればいいのですよね。逆に中国では風呂敷は使わないと思いますし、ネッカチーフを巻く文化はあるのだから、そう用いていただければいいわけです。

勉強になりました。「使用法のご提案」。

今日は一組銀座自由行動中のお客様をお待たせして、大変ご迷惑をおかけしてしまったのですが、「せっかく銀座にきているのだから時間を一分たりとも無駄にしたくない!」という気持ちはとてもよく分かります。私も南イタリアで似たような想いをしました。だから、「気死了!」を繰り返すお客様にひたすら頭を下げ、申し訳なく思いました。

そして「名牌」の力。

プラダ・グッチ・ヴィトン・エルメス・・・・中国の方が皆様欧州の高級ブランドの商品を求めていらっしゃいます。ところが、デパートはそれらのテナントに入居して「いただく」余裕がないのです。むしろ路面隣接の高級ブランドの出店が取りやめになると、その都度の改装費用などで支出も増えていると思われます。

それであれば、今まで欧州の高級ブランドが埋めていた空間に日本人のプロモーターを導入して、数年後に利益が回収できるように育てていくのはいかがでしょうか。何もかもの時間が短くなり、成果が出る前に切られてしまう。そんなことは意味がないのです。どうせ赤が出るなら、「ヴィトンもグッチもないから不要だ」と言われるような百貨店ではなく、「これがあるから来てみたかった」と言われる百貨店になったほうがずっといいと思うのです。

今回売り場に立っておりますと、テレビやインターネットで紹介されていたといって日本では有名ではないオリジナルブランドの店舗が松坂屋内にないか、銀座のどこにあるかとお尋ねになる方がいらっしゃいます。

そういうものを探して、並べて、価値をつけていくのが百貨店の出来る仕事ではないのでしょうか。百貨店の内部や日本の方からは「デパート業界は酷いものだ」と聞きますが、私はむしろ、「百貨店というシステムはまだ生きているし、それが望まれている」と思っています。

顧客や観光客の皆様に喜んで利用できるように、正規のきちんとした社員を揃えること、言葉の壁を減らしていくこと、既存の高級ブランドだけでなく、自社が育てるつもりで独自のことをしている小さいメーカーやバイヤーを揃えていくのが、百貨店が求められていることなのではないでしょうか。

百貨店の社員として長年ご苦労なさっている方々が読まれると本当に腹立たしいようなことを、若輩で門外漢の私が言うべきところではないかもしれません。

しかし、部分的な内部関係者として、お客様の声を立ち聞いてしまった者として、ここに書き記しておきます。